国民皆保険の意義を考える
健康保険法制定100周年の年に国民皆保険の意義を考える
国民皆保険制度――。
これはわが国の住民が何らかの公的医療保険に加入する制度です。
同制度は国民健康保険が全国で整備された1961年から始まり昨年60周年を迎えました。
これにより誰もがいつでもどこでも1〜3割の自己負担で保険医療機関を受診することができます。
当たり前のように思えるかもしれませんが、実は世界でも類をみない画期的な仕組みなのです。
同制度が戦後、国民の健康状態の向上に大きく寄与し、短期間で平均寿命を世界のトップレベルに押し上げたといっても過言ではありません。
公的医療保険は、サラリーマンや公務員等が加入する被用者保険(健保組合、協会けんぽ、共済組合等)、自営業者や年金受給者等が加入する国民健康保険の2つに大別され、それとは別に75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度があります。
このうち、健保組合、協会けんぽの設立や事業等に関する根拠法が健康保険法です。制定されてから今年で100周年を迎えます。
健康保険法は1922(大正11)年4月22日に公布された古い法律です。
同法により設立された健保組合は労使協調の下、その業務は単に医療費の支払いのみでなく、ウオーキング大会や健康教室の開催、健康診断や人間ドックの実施等加入者の健康の維持・増進を図るための事業を行うことで、わが国における健康長寿社会の形成に大きな役割を果たしてきました。
100年の間、特にこの数十年は少子高齢化が急速に進み、バブル崩壊後の長引く経済停滞など大きく社会・経済の環境が様変わりしました。
その結果、増大し続ける高齢者の医療費を支援する現役世代の負担が急増し限界に達しようとしています。
この状況が今、国民皆保険制度の足元を危うくしています。制度の根幹を維持しつつも現状に沿った思い切った改革を早急に行う必要があります。
一度崩壊してしまった制度を再構築するのは至難の業です。この100周年の年に国民皆保険の意義を改めて考えてみてはどうでしょう。
【コラムは無断転載禁止】