現役世代を守るための改革断行を!
健康保険組合全国大会を開催
厚生労働省が10月24日に公表した「毎月勤労統計調査」の2024年8月分の確定値によると、基本給や残業代などを合わせた現金給与総額は29万6154円、前年度比2.8%増で32カ月連続のプラスでした。
しかし、物価の変動分を反映した実質賃金は▲0.8%と3カ月ぶりにマイナスに転じました。
実質賃金は本年6月、27カ月振りにプラスに転じたばかりでした。
今回のマイナスは、物価の上昇に賃金が追い付いていないことを示唆しており、今後の動向が注目されるところです。
このような状況の中、健保連は同24日、健康保険組合全国大会を都内で開催しました。
大会のテーマとして「現役世代を守るための改革断行を! ―2025年を乗り越え、未来につながる皆保険制度に―」を掲げその実現に向けて、
①皆保険を全世代で支える持続可能な制度の実現
②医療の効率化に資する医療DXの推進
③安全・安心で効果的・効率的な医療提供体制の構築
④健康寿命の延伸につなげる健保組合の役割強化
――の4つのスローガンに基づく決議を健保組合の総意として採択しました。
未曽有の超高齢社会にあって、現役世代は健康保険料の一部を高齢者医療へ拠出しており、この拠出金は健保組合支出の4割強を占めています。
来年は、団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となるため、今後、高齢者医療への拠出金が一層増加し、制度を財政面で支える現役世代の負担が限界を超えることが強く危惧されています。
国民皆保険制度を次世代へ残していくためには、特に「現役世代の負担軽減」や「世代間の給付と負担のアンバランス解消」が不可欠。
「負担は現役世代、給付は高齢者」という仕組みを改め全世代が納得して負担しあう持続可能な制度とするための改革断行が急務となっています。
こうした改革に向けた国民的議論が、節目となる25年に行われていくことを期待します。
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コラム一覧
経常収支は▲1367億円の赤字
2023年度健保組合決算見込み公表
経常収支は▲1367億円の赤字
健保連は10月3日、厚生労働省内で記者会見を開き、2023年度健保組合決算見込みと今後の財政見通しを公表しました。
1379組合の決算見込み(8月時点)を基に、2023年3月末時点に存在する1380組合の財政状況を推計しその結果を取りまとめたものです。
2023年度の決算見込みは経常収入総額8兆8313億円、経常支出総額が8兆9680億円となり、経常収支差引額は▲1367億円の赤字です。
収支は前年に比べて悪化し、全体の5割を超える726組合が赤字となりました。
なお、赤字組合の収支差引額は▲2867億円となっています。
保険料収入が、対前年度比2.7%(2295億円)増加した一方、保険給付費は新型コロナほか呼吸器系疾患などの流行により、2022年度に続き5.3%(2398億円)と大きく増加しています。
さらに、高齢者医療への拠出金が7.3%(2469億円)増加しており、中でも団塊世代が75歳に到達した影響により、後期高齢者医療への支援金が9.6%(1884億円)と大幅に増加しています。
今後の健保組合財政の見通しについては、本年の春闘に伴う賃金引き上げ効果による保険料収入の増加が見込まれる一方、団塊世代の75歳到達により支援金が増加し、2024年度以降も拠出金の増加傾向が続くことから、健保組合財政に対する影響が危惧されるとしています。
さらに、新型コロナの影響前からみた2024年度の財政見通しとして、拠出金が対2019年度比12.2%(4200億円)と保険料収入の伸び(11.2%)を上回って増加し、2025年度以降も毎年1000~2000億円増加する見込みを示しました。
保険給付費は対2019年度比19.0%(7800億円)と大幅な増加を見込んでいます。
今回の決算見込みと今後の財政見通しを踏まえ健保連は、現役世代の負担軽減に向けて、高齢者医療制度における窓口負担割合などの見直しが必要だと指摘しています。
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女性の健康問題、ロコモにも着目
59回目を迎える「健康強調月間」
女性の健康問題、ロコモにも着目
「健康強調月間」が始まりました。
同月間の趣旨を踏まえた4つのアクションを促すポスターは紹介しましたが、このほかにも多様な事業を行っています。
ここではそのうちの2つに着目して紹介します。
1つは女性のライフステージに応じた健康づくりです。
内閣府が6月に公表した「24年版男女共同参画白書」では、男性特有の病気は50代以降で多くなる傾向にある一方、女性特有の病気は20~50代の働く世代に多く、その種類もさまざまであると指摘しています。
ライフステージによって多くの健康課題を抱え、加えて女性の社会進出増加に伴い職域で女性特有の健康課題へ対応することが求められています。
厚生労働省は「健康日本21(第三次、2024~35年度)」で、新たに「女性の健康」を明記し、関連する目標を設定しました。
これまで性差に着目した取り組みが少なかったため、新規の項目として女性に多いといわれる骨粗しょう症の検診受診率の向上が掲げられました。
具体的には、自治体の乳がん検診、子宮頸(けい)がん検診に準ずる形で骨粗しょう症の検診受診率を現状の5.3%から15%(32年度)まで向上させることが目標として設定されました。
こうした状況を踏まえ今回は、女性のライフステージごとに罹(かか)りやすい病気や体の変化など、女性特有の健康課題の周知と、職場での理解促進を目的としてポスターを作成しました。
もう1つのロコモ・筋力低下予防については、今月のすこやか特集(次頁)で取り上げました。
心身の健康の保持、増進を図るため、同月間を機に、ご自身のこれまでの日常生活を振り返ってみませんか。
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1年間で日本人が86万人減少
1年間で日本人が86万人減少
過去最大幅で人口減少が加速
7月にわが国の世帯や人口に係る国の統計が立て続けに公表されました。
厚生労働省が同5日に公表した「2023年国民生活基礎調査」は3年ごとに大規模調査を行っていますが、中間年に当たる今回は世帯の基本的な事項等の調査にとどまっています。
それによると23年6月1日現在の総世帯数は5445万2千世帯で、このうち「単独世帯」が1849万5千世帯(全世帯の34.0%)と、 「夫婦と未婚の子のみの世帯」(同24.8%)や「夫婦のみの世帯」(同24.6%)を上回り過去最高となりました。
世帯類型では「高齢者世帯」が1656万世帯(同30.4%)で全世帯の約3分の1を占めています。
一方、「児童のいる世帯」は983万5千世帯で全世帯の18・1%と世帯数、割合とも過去最少を記録しました。
また、24日に総務省が公表した住民基本台帳に基づく、本年1月1日時点の国内の日本人人口は1億2156万1801人で前年から86万1237人減りました。
減少は15年連続で前年比の減少幅は調査開始以来、過去最大となっています。
今後、2050年にかけて都市部では高齢人口が増加する一方、地方では人口減少が深刻化するとされ、人口構造の変化も自治体や地域ごとに異なるため、早急な対応が求められます。
こうした中、国の予算編成や経済財政運営の指針として、6月21日に閣議決定された「骨太の方針2024」では、老朽化により更新時期を迎えるインフラ・公共施設が一斉に増加していくことを踏まえ、公共サービスやインフラ維持管理の広域化・共同化を進める方向性を示しました。
合わせてDXや新技術の社会実装により地域機能やサービスの高度化を図り、新しい生活スタイルへ移行させていくとしています。
医療・介護分野だけでなく、人口減少社会におけるさまざまな社会課題への対応手段として注目されるDXですが、各地方や地域でその恩恵を感じられる形で推進されることが期待されます。
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「骨太の方針2024」を閣議決定
「骨太の方針2024」を閣議決定
医療・介護等のDXを着実に推進
政府は6月21日、国の予算編成や経済財政運営の指針となる「骨太の方針2024」を閣議決定しました。
骨太の方針では、多岐にわたる課題を取り上げていますが、少子高齢社会における医療・介護等の課題についても言及しています。
少子化といえば、厚生労働省が同月5日に公表した2023年の人口動態統計月報年計(概数)では、出生数が72万7277人で8年連続減少し過去最少を記録、女性が一生の間に産む子どもの数を表す合計特殊出生率も1.20と過去最低を記録したことが分かりました。
一方、死亡数は157万5936人、自然増減数は△84万8659人と17年連続の減少で過去最大です。
こうした中で決定された骨太の方針では、経済・財政・社会保障の持続可能性を確保するためには、人口減少が本格化する2030年度までが経済構造の変革を促すラストチャンスであるとし、欧米並みの生産性上昇率への引き上げ、高齢者の労働参加率の上昇ベースの継続や女性の就業の正規化促進など、わが国の成長力を高める取り組みが必要としています。
社会保障分野では、医療・介護の担い手を確保し、より質の高い効率的な医療・介護の提供体制を構築するため、政府を挙げて医療・介護DXを強力に推進するとしています。
そのための具体的な課題として、ロボット・デジタル技術やICT・オンライン診療の活用などを挙げています。
さらに、12月2日からマイナ保険証を基本とする仕組みに移行するほか、全国医療情報プラットホームの構築、電子カルテの導入や電子カルテ情報の標準化、電子処方箋の普及拡大などを推進するとしています。
この数十年で人口や社会の構造、さらに人々の働き方は大きく変わりました。
今後、社会保障の持続可能性を確保していくためには、医療・介護を含む社会全体のDXを推し進めていくことが、今回の骨太の方針が求めている取り組みの1つであるといえそうです。
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健康保険証の廃止まで半年を切る
マイナ保険証への理解と利用を
12月2日の健康保険証の廃止まで6カ月を切りました。
同日以降、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」を基本とする仕組みへ移行します。
医療界、保険者、経済界の代表らが集う「日本健康会議」は4月25日、マイナ保険証の利用を促進するため「医療DX推進フォーラム―使ってイイナ!マイナ保険証―」を開催。
フォーラムでは、本年5月から7月までを「集中取組月間」と位置付けた上で、「医療機関・薬局、保険者、事業主、行政など、医療に関わる全ての主体が一丸となって、マイナ保険証の利用促進に取り組みます」などとする「マイナ保険証利用促進宣言」を行いました。
さて、4月末時点のマイナンバーカードの保有状況ですが、9238万枚で人口に対する保有率は73.7%、健康保険証としての利用登録は7255万枚で登録率は78.5%です。
実際にマイナ保険証を医療機関で利用された方は、4月分の実績で6.56%ですが、内訳を見ると病院が13.73%で最も高く、次いで歯科診療所の10.91%。一方、医科診療所と薬局が5%台でした。
ただし、厚生労働省が行ったアンケート調査では、マイナ保険証を利用したことがあると回答した方の67.7%、約3人に2人がマイナ保険証を「(今後も)利用したい」と回答しています。
以前問題となった登録データの入力ミスについては、昨年11月までに全ての登録済データの住民基本台帳情報との突合(とつごう)を完了し、さらに確認が必要な139万件については本年4月までに保険者等による確認作業が終了しています。
この5月からは、新規の誤り事案の発生防止に向けた取り組みとして、新規加入者の登録時に、全てのデータについて住民基本台帳情報とのシステムによる突合が行われているところです。
「習うより慣れろ」という言葉があります。
まずはマイナ保険証を使って、より良い医療が受けられる等のメリットを実感してみてください。
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24年度健保組合予算編成状況を公表
24年度健保組合予算編成状況を公表
6千500億円超の経常赤字
健保連は4月23日、2024年度健康保険組合予算編成状況(早期集計結果)を公表しました。
今年度の予算編成における全健保組合の経常収支差引額は、推計で前年度の5621億円を超える6578億円の赤字となる見通しで、予算ベースで過去2番目の規模となります。
被保険者数の堅調な伸びと賃金引き上げなどにより保険料収入は対前年度比4・5%、3811億円増えたものの、新型コロナ感染拡大下での医療費の高い伸びや高齢者医療への拠出金の増加などが赤字の主な要因。
特に団塊の世代が75歳に到達し始めた影響で、拠出金が前年度より4・6%(1701億円)増の3兆9千億円弱となりました。
今後も、高齢化の進展に伴い拠出金が増え続けることが懸念されています。
一方、政府が掲げる「こども未来戦略・加速化プラン」に盛り込まれた施策の実行に向けた改正法案などが国会で審議されていますが、注目されるのが「子ども・子育て支援金制度」の創設。
これは少子化対策のさまざまな施策の財源の一部を医療保険制度の保険料に、上乗せして拠出する仕組みです。
少子化対策は国を挙げて取り組むべき重要課題ですが、増加の一途をたどる現役世代の負担が過重にならないよう、歳出改革で社会保険負担が確実に軽減されないと絵に描いた餅になりかねない危うさがあります。
わが国にとって、国民皆保険制度の維持と少子化対策は欠くことができない車の両輪の関係にありますが、まずは人口構造や社会環境の変化に対応し、医療保険制度の持続可能性を高めるため、これまでにない抜本的な改革を行うことが待ったなしの状況です。
全世代で医療費を公平に負担する仕組みの構築を進めるだけでなく、医療DXの推進等により、国民にとって安全・安心で効率的・効果的な医療を実現することも不可欠です。
現役世代が、将来への希望を持てる施策が実行されることを期待します。
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厚労省が約10年ぶりに睡眠指針を改訂
厚労省が約10年ぶりに睡眠指針を改訂
年代別の推奨事項を提示
適度な運動やバランスの取れた食事に加え、適切な睡眠時間を確保することは、体やこころの健康のために重要なことです。
しかし、OECD(経済協力開発機構)の2021年調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と各国平均の8時間28分より1時間以上短く、33カ国の中で最も短いという結果でした。
厚生労働省は14年に公表した「健康づくりのための睡眠指針2014」を最新の科学的知見を基に約10年ぶりに改訂し、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」として、このほど公表しました。
今回の改訂では、①成人、②こども、③高齢者の区分で睡眠にかかわる推奨事項を提示した他、ライフステージ別の推奨事項について、一定のエビデンスがある情報や生活指導実施者等の参考となる情報を掲載したのが特徴です。
このうち「成人版」では、
①適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する
②食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める
③睡眠の不調・睡眠休養感の低下がある場合は、生活習慣等の改善を図ることも重要であるが、病気が潜んでいる可能性にも留意する
――ことを推奨。
特に睡眠時間が極端に短いと肥満、高血圧、糖尿病、認知症、うつ病などの発症リスクが高まるとの研究結果を併せて掲載しています。
「高齢者版」では、「成人版」の②に加え、
①長い床上時間(寝床で過ごす時間)は健康リスクとなるため、床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な時間を確保する
②長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中の長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす
――ことを推奨しています。
その上で、9時間以上の睡眠がアルツハイマー病の発症リスクを増加させる、という研究結果を紹介しています。
この機会に、自身やご家族のより良い睡眠について考えてみてはいかがでしょうか。
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アルコール健康障害の発生予防に指針
アルコール健康障害の発生予防に指針
「飲酒に関するガイドライン」を公表
4月は入社や異動の季節です。
今年は新型コロナの影響もなく、歓送迎会を計画している幹事さんもいるでしょう。
歓送迎会と言えばアルコール飲料が付き物ですが、最近では、あえてお酒を飲まない、もしくは少量しか飲まない「ソバーキュリアス」というライフスタイルが働き盛り世代で増えているともいわれています。
これに拍車を掛けそうなのが、2月19日に厚生労働省が発表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」です。
飲酒のリスクや影響、飲酒の際に気を付けた方が良いことなどを取りまとめたものです。
同ガイドラインは、アルコール健康障害の発生を防止するため、国民一人ひとりがアルコールへの関心と理解を深め、必要な注意を払って不適切な飲酒を減らすことを目的に、お酒に含まれる純アルコール量(g)を数値化する算出式を示しています。
例えばビール500㎖(5%)の純アルコール量は20gとなります。
また、ガイドラインでは病気ごとに発症リスクが上がる飲酒量もまとめており、大腸がんでは、1日当たり20g程度(週150g)以上、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などの場合は、たとえ少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げるとの研究結果も公表されています。
さらに、避けるべき飲酒時の注意として
①一時多量飲酒(特に短時間の多量飲酒)
②他人への飲酒の強要等
③不安や不眠を解消するための飲酒
④病気療養中の飲酒や服薬後の飲酒(病気等の種類や薬の性質で変化)
―といった項目が示されています。
「百薬の長」といわれたお酒も、今後は健康に配慮した飲み方として挙がっている「あらかじめ量を決めて飲む」「飲酒前に食事を取る」「飲酒の合間に水や炭酸水を飲んでアルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする」「1週間のうち飲酒しない日を設ける」などを、今まで以上に意識していく必要がありそうです。
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健康保険証は本年12月2日に廃止
健康保険証は本年12月2日に廃止
マイナ保険証移行の背景とは
先月号でもお知らせしましたが、政府は本年12月2日に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化することを決定しました。
では、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の活用を推進する背景には何があるのでしょうか。
少子高齢化が進むわが国では、国民の健康増進や効果的・効率的な医療を提供するため、医療分野のデジタル化推進が重要課題となっています。
コロナ禍で認識された課題として、平時からのデータ収集・共有を通じた医療の「見える化」やデジタル化による業務効率化の推進等への対応も急務です。
マイナ保険証は、こうした課題への対応や国民一人ひとりが自らの保健・医療情報へのアクセスを可能とする公的な社会インフラの一つであるということが、推進の背景にあると言えるでしょう。
マイナ保険証を使うと、オンライン資格確認等システムとの連携により医療情報の共有化が図られ、初めて受診した医療機関でも、本人が同意すれば特定健診の結果や薬剤・診療情報が医師等と共有でき、より適切な医療が受けられます。
マイナ保険証を使ってマイナポータルにアクセスすれば、自身が受けた健診や薬剤・診療の情報を確認することもできます。
さらに、本人の同意で高額な医療費が発生した際の立替払いが不要となります。転職等をした場合も新たに加入する健保組合等保険者で手続きを行えば、引き続き同じマイナ保険証で受診することができます。
また、マイナ保険証は顔写真付きなので、従来の健康保険証のようななりすましや不正利用の防止にも役立ちます。
健保組合は現在、登録データの確認作業を行うなど、マイナ保険証への円滑な移行に向けた取り組みを国と連携して進めています。
次号以降の「知っておきたい!健保のコト」では、保険証廃止を見据え、マイナ保険証の利活用等について解説する予定です。
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止まらない少子化、高齢者の増加
止まらない少子化、高齢者の増加
2025年以降を見据えた議論を
新年早々、発生した能登半島地震により甚大な被害が生じ、2日には痛ましい航空機事故も起きました。
亡くなられた方がたにはお悔やみを申し上げますとともに、被災された全ての方がたにお見舞い申しあげます。
一日も早く日常生活に戻られることを願ってやみません。
今年は思いもかけない出来事から始まりましたが、一方でわが国の少子化はとどまるところを知りません。
昨年末、総務省が公表した辰年生まれの人口は、約1005万人(男性488万人、女性517万人)、十二支の中では9番目の低さです。
2005年生まれの新成人人口は約106万人(18歳)で前年より6万人減少と過去最低を更新し、少子化が進んでいるのが見て取れます。
政府は、少子高齢化対策に向けて昨年、全世代型社会保障制度の構築に向けた健保法の改正やマイナンバー法等の改正を行ったほか、「異次元の少子化対策」の一環として、いわゆる「年収の壁問題」への対応も講じました。
この4月からは、現役世代の負担を軽減するため、出産育児一時金に係る費用の一部を75歳以上の後期高齢者の保険料から支援する仕組み(保険料の上限を24年度と25年度に段階的に引き上げ)が始まります。
また、効率的・効果的な医療の提供等を推進するため、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を本年12月2日に行うことが決定されました。
さらに本年は、少子化対策の財源を確保するための「支援金制度」の具体化に向けた検討が見込まれますが、徹底した歳出改革も行うなど現役世代の理解を得ることが求められます。
ご存じのように2025年には団塊の世代が全て後期高齢者となり、これ以降、生産年齢人口の減少が加速化する一方、高齢者は増え続けます。
今こそ、〝2025年以降〟を見据え、医療保険制度の持続性を確保していくための議論を始めることが必要です。
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将来を見据えた制度の構築を
少子高齢化で増大し続ける医療費
将来を見据えた制度の構築を
謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
本年も健保連・健保組合は、皆さんの健康維持・増進のための事業をはじめ、将来も安心して医療が受けられる医療保険制度の実現に向けた活動に取り組んでまいります。
厚生労働省は昨年10月24日、2021年度の国民医療費が45兆359億円、国民1人当たりで35万円8800円と、前年度に比べ4・5%増加し、過去最高となったことを公表しました。
増加の主な理由は、人口の高齢化や医療の高度化に加え、新型コロナの感染拡大に伴う前年度の受診控えの反動も大きな要因として挙げられています。
構成割合をみると、65歳以上が全体の60・6%、うち75歳以上が38・3%といずれも高い比率を占めています。
少子高齢化の進展に伴って、高齢者医療費の割合は増大しており、それは現役世代の保険料負担によって支えられています。
既にお伝えしたとおり、昨年は「異次元の少子化対策」の号令のもと、「年収の壁問題」などの見直しが行われました。
今年も引き続き、少子化対策の財源を確保するための「支援金制度」の具体化に向けた国の検討が進みそうですが、少なくとも負担する現役世代の理解と納得が得られる仕組みとすることが不可欠です。
さて、今年の干支は「甲辰(きのえたつ)」。
甲は10年を1サイクルとする十干(じっかん)の初めの年で、勢いを増していく年と言われています。
辰は十二支の中で唯一の架空の生き物、「龍(りゅう)」を意味し、水や海の神としてまつられ、大自然の躍動やめでたいことの象徴として伝えられてきました。
甲辰である本年は物事が良い方向に伸びていく年となることが期待されます。
干支の意味するとおり、時勢が大きく変わり、閉塞感や未来への不安が少しでも払しょくされるよう、将来を見据えた持続性のある医療保険制度の構築に向けて、大きく前進する年にしたいものです。
【コラムは無断転載禁止】
将来世代が希望を持てる制度改革を!
将来世代が希望を持てる制度改革を
健康保険組合全国大会を開催
この1年を振り返ると、新型コロナが、インフルエンザと同じ「5類」に移行し、普通の生活に戻りつつある一方、夏、秋ともかつてない記録的な猛暑に。
外に目をやれば世界規模での異常気象やロシアによるウクライナへの軍事侵攻が依然として続く中、新たにイスラエルとイスラム組織の間で軍事衝突が勃発するなど、世界中で変動が多かった年と言っても過言ではありません。
一方、わが国の少子化は止まらず、出生数は過去最少を更新しました。
岸田文雄首相は「異次元の少子化対策」を掲げ、本年6月に策定した「加速化プラン」の具体化や安定的な財源の確保に向けた議論を年末に向けて重ねています。
その財源について11月9日、こども家庭庁の有識者会議で医療保険料に上乗せして徴収する「支援金制度」が提案されました。
政府は、徹底的な歳出改革等も行い、全体として追加負担とならないことを目指すとしていますが、健保連は「税や一般的な社会保険とは性質が異なる。国がしっかり合理的な説明をし、国民に納得してもらう必要がある」と意見を述べました。
健保連は10月25日、健保組合全国大会を都内で開催し、昨年に引き続きオンラインによる同時開催も実施しました。
大会のテーマとして「将来世代が希望を持てる制度へ!医療DXを推進し、改革実現と健保組合のさらなる機能強化を」を掲げ、その実現に向けて
①社会情勢の変化を見据え、全世代で支え合う制度へ
②医療DXを推進し、国民の健康と安心を確保
③安全・安心で効果的・効率的な医療提供体制の構築
④保険者機能の推進による健保組合の価値向上――の4つのスローガンに基づく決議を健保組合の総意として採択しました。
これらは少子高齢化が急速に進む中で、医療保険制度を維持していくための最低限の主張です。
来年こそ将来世代が希望を持ち、未来への不安が少しでも払拭され、明るい年となるよう期待したいものです。
【コラムは無断転載禁止】
「年収の壁」問題、当面の対応策が決定
抜本的な対策を今後検討
8月の小欄で紹介した働く女性の活躍の場を狭める要因にもなっていた、「年収の壁」問題への対応策が示されましたので紹介します。
人手不足への対応が急務となる中、短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりに向けた厚生労働省の「年収の壁・支援強化パッケージ」が9月27日に公表され、同日の全世代型社会保障構築本部で決定されました。
これを受け、10月からその具体策が逐次実施されていくことになりました。
まず、従業員101人以上(2024年10月以降は51人以上)の企業で社会保険への加入が必要となる年収「106万円の壁」で発生する事業主・労働者の保険料負担への対応については
①キャリアアップ助成金を新設し、労働者の収入を増加させる取り組みを行った事業主に対して、複数年(最大3年)で計画的に取り組むケースも含め、労働者1人当たり最大50万円の支援を一定期間行う
②新たに適用となった労働者に事業主が給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」を支給することができ、この手当については、被用者保険適用に伴う本人負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、当該労働者の標準報酬月額・標準賞与額の算定から除外する
とした負担軽減策が打ち出されました。
事業規模にかかわらず社会保険への加入が義務付けられる「130万円の壁」への対応については、年収130万円を超えることが見込まれる場合に直ちに被扶養者認定を取り消すのではなく、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な増収である旨の事業主の証明を添付することで、被扶養者認定の迅速な判断を促し、引き続き被扶養者にとどまることが可能となるような考え方が示されました。
今回の措置は、2025年の年金制度改革を視野に置いたもので、今後、同改革に向けて抜本的な対策が検討されることになります。
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予防可能ながんの経済的負担1兆円超
予防可能ながんの経済的負担1兆円超
検診や生活改善で負担の軽減も
10月は、人間ドックや健診などを受診する人が多い時期の1つといわれています。
また、同月は健保連・健保組合主催の「健康強調月間」の他、国が主体の「がん検診受診率向上に向けた集中キャンペーン月間」や「がん対策推進企業アクション」など多彩な催しが行われます。
がんは、1981年にわが国の死因第1位となって以降、その罹患(りかん)者数は2019年で約100万人、死亡者数は21年で約38万人と増加傾向にあります。
こうした実態にもかかわらず、わが国のがん検診は、諸外国に比べて受診率が低く、特に女性では30~40%台で推移しており、政府の第3期がん対策推進基本計画の目標値である検診受診率50%以上とは大きな開きがあります。
このほど、日本人の予防可能なリスク要因に起因するがんの経済的負担が1兆円を超えるという推計が公表されました。
推計したのは国立がん研究センター、国立国際医療研究センターの2機関。
がんによる総経済的負担は約2兆8597億円(男性約1兆4946億円、女性約1兆3651億円)と推計されています。
このうち生活習慣や環境要因など予防可能なリスクの軽減に適切に努めれば、命を救うだけでなく1兆240億円の経済的負担を減らせる可能性があるという興味深い内容です。
個別にみると、男女とも胃がんの経済的負担が最も多く(男性約1393億円、女性約728億円)、次いで男性は肺がん(約1276億円)、女性は子宮頸(けい)がん(約640億円)の順です。
リスク要因別の経済的負担は「感染」によるものが約4788億円と最も高く、これに「能動喫煙」「飲酒」「運動不足」「過体重」が続きます。
検診等を定期的に受診することや生活習慣の改善に取り組むことは、ご自身やご家族の健康を守るだけでなく、経済的負担の軽減にもつながるという面にも目を向けてもらいたいと思います。
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コロナ禍で進んだデジタル活用
コロナ禍で進んだデジタル活用
高齢者の日常生活に深く浸透
わが国の総人口(1億2495万人、2022年10月1日現在)に占める65歳以上人口は3624万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は29・0%です。
将来推計では70年には2・6人に1人が65歳以上になる見込みです。
当然、年金・医療・介護など社会保障に係る費用が増大し続けるという深刻な課題はありますが、少子化の中で医療・介護の効率性をICT技術の活用で高めながら、人口の多くを占める高齢者の生活に沿った社会環境を構築していくこともこれからの重要な課題です。
こうした高齢者の暮らしの動向について興味深い調査がこのほど政府から公表されました。23年版「高齢社会白書」です。
それによると、コロナ禍前に比べ、情報収集にインターネットを活用する、携帯電話・スマートフォンで家族や友人などと連絡をとる高齢者が増えたことが分かりました。
過去の政府調査との比較で、コロナ禍の影響によるコミュニケーションの変化については、「人と直接会ってコミュニケーションをとることが減った」が6割超、そのうち約3割が「直接会わずにコミュニケーションをとることが増えた」と回答しています。
具体的手段としては「携帯電話・スマートフォンで家族・友人などと連絡をとる(メールを含む)」が政府の15年調査と比較して7・1ポイント増の75・7%です。
「健康・医療に関する情報収集にインターネットを活用する」は同17年調査時よりも30・2ポイント増の50・2%と大きく増えています。
AIの活用といった技術革新が進む中、今後ますますデジタル技術が高齢者の生活の中に広がっていくことは必須です。
一方、こうした環境になじめず、利用していない高齢者も一定数実在します。
高齢者にも分かりやすく手軽に利用できるデジタル機器の開発や現行のシステムの環境整備が今求められています。
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期待される女性活躍の環境整備
「女性版骨太の方針2023」
期待される女性活躍の環境整備
政府は6月16日、国の予算編成や経済財政運営の指針となる「骨太の方針2023」を決定しました。
多岐にわたる課題の中で女性の活躍にも焦点を当てています。
その前提になったのが「すべての女性が輝く社会づくり本部」と「男女共同参画推進本部」の合同会議が13日に決定した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」(女性版骨太の方針2023)です。
同方針では、全ての人が生きがいを感じ、多様性が尊重される持続的な社会の実現のため①女性活躍と経済成長の好循環の実現に向けた取り組みの推進、②女性の所得向上・経済的自立に向けた取り組みの強化などが重点事項に挙げられています。
①では女性登用を加速化するため、プライム市場上場企業において、2025年を目途に女性役員を1名以上、30年までに女性役員比率を30%以上の数値目標を設定、②では被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせないための当面の対応を今年中に実行し、さらに制度の見直しに取り組むとしています。
注目されるのはこの「年収の壁」問題。
結婚後、パートで働く女性には4つの年収の壁があります。まずは税金の壁で103万円を超えると所得税がかかります。
次は社会保険の壁で、従業員数101人以上(24年10月以降は51人以上)の企業では社会保険への加入が必要となり、第1の壁として収入106万円超で発生する保険料の負担があります。
第2の壁が130万円で企業規模にかかわらず社会保険への加入が義務付けられます。
最後が再び税金の壁で150万円を超えると、夫の配偶者特別控除額が段階的に減少していきます。
パートの方は、この103万円や106万円を超えないよう勤務時間等を調整するのですが、これが低賃金や女性の活躍の場を狭める要因と指摘されており、この解決に向けた政府の対応が注目されます。
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「骨太の方針2023」を閣議決定
「骨太の方針2023」を閣議決定
負担増は十分な議論と説明を
「次元の異なる少子化対策」の内容や財源の議論を行っている「こども未来戦略会議」(議長・岸田文雄首相)は6月13日の第6回会合で、「こども未来戦略方針」を取りまとめました。
方針では、2024~26年を集中取り組み期間とし、その間に「児童手当の拡充」「出産等の経済的負担の軽減」といった施策を「加速化プラン」として、できる限り前倒し実施するとしています。
3兆円台半ばを見込む財源の確保について増税は行わないとしつつ、28年までに徹底した歳出改革等を行い、それらによって得られる公費・社会保険負担軽減の効果を活用しながら、実質的に追加負担を生じさせないことを目指す、との考え方が示されました。
今後、社会保険制度を活用した「支援金制度(仮称)」を構築し、その詳細については年末に結論を出す、としています。
少子化対策が重要なのは言うまでもありませんが、現役世代中心の健保組合の財政が非常に厳しい状況にあるのも事実です。
健保連はこのほど、23年度健保組合予算早期集計の結果を公表しましたが、健保組合全体の経常収支差引額は、過去最大の5623憶円の赤字となる見込みが明らかになりました。
その大きな要因は新型コロナの影響等による保険給付費の増と、団塊の世代が75歳に到達し始めたことによる後期高齢者医療への拠出金が約10%急増したことによるものです。
政府は6月16日、国の予算編成や経済財政運営の指針となる「骨太の方針2023」を閣議決定しました。
注目の「加速化プラン」については、「こども未来戦略方針」に沿った内容が盛り込まれ、安定財源確保の具体策は年末の予算編成時まで先送りされました。
どのような形であれ社会保険料を通じて負担を求めるのであれば、健保組合等の事業主や加入者、さらには国民全体の理解が得られるよう、十分な議論と関係者への丁寧な説明が求められます。
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少子化対策の財源議論始まる
少子化対策の財源議論始まるも
50年後の人口は8700万人
「異次元の少子化対策」を掲げた岸田文雄首相の主導のもと、政府は3月末にこども・子育て政策の強化に関する「たたき台」を取りまとめました。
これを受けて4月7日、「こども未来戦略会議」(議長・岸田首相)の初会合が開かれました。
「たたき台」には、若い世代の所得増や妊娠・出産時から0~2歳の支援の強化などを掲げました。
子育ての経済的支援の強化では、既に出産育児一時金の大幅な引き上げが行われていますが、2024年度から実施される出産費用の見える化の効果を検証した上で、出産費用の保険適用の検討を行う方針が示されました。
また、児童手当の所得制限撤廃や支給期間の延長なども盛り込まれており、児童手当の具体的内容は、今後、財源の議論と併せて検討し、政府が6月に策定する「骨太の方針2023」までに結論を得るとしています。
戦略会議では、「骨太の方針2023」に向けて、対策項目の具体化や裏付けとなる安定財源の確保に向けた検討に入ります。
そうした最中、国立社会保障・人口問題研究所は4月26日、「日本の将来推計人口(令和5年推計)」の結果を公表しました。
推計では2020年の総人口1億2615万人が50年後の70年には8700万人(69・0%)まで減少し、他方で65歳以上人口の割合が同28・6%から同38・7%に上昇するというもので、少子高齢化がもたらす厳しい現実が改めて突き付けられました。
50年先といえども、人口減少は今後のわが国の経済・社会の仕組みや社会保障制度に大きな影響を与えます。
翌4月27日の戦略会議では、こども・子育て政策に必要な財源の議論が行われました。
有識者からは「世代を問わず、能力に応じて負担する仕組みとすべき」、「社会で広く薄く負担すべき」などの意見が出る一方で、「中期的には税も含めて検討すべき」との意見も出るなど、今後の議論が注目されます。
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改正法案の国会審議始まる
全世代型社会保障制度の構築目指し
改正法案の国会審議始まる
全世代型社会保障制度の構築に向けた健保法や、マイナンバー法等の改正法案が通常国会に提出され、審議が始まりました。
主な改正事項は、①後期高齢者医療制度が出産育児一時金に係る費用の一部を支援する仕組みの導入、②かかりつけ医機能が発揮される制度整備、③マイナンバーカードと健康保険証の一体化、④戸籍、住民票等の記載事項に「氏名の振り仮名」の追加―などです。
①は、こども・子育て支援の拡充のため、出産育児一時金の支給額を8万円引き上げ、4月から50万円としますが、その財源の一部を現役世代の負担軽減のため75歳以上の後期高齢者の方がたにも保険料を増額して負担してもらうというものです(2024年度から)。
②は、国民への情報提供の充実・強化やかかりつけ医機能の報告に基づく地域での協議の仕組みを構築し、地域で機能の確保に向けた方策を検討・公表するというものです。
③は、デジタル化を通じた効率化促進により国民の利便性を高めるため、マイナンバーカードと健康保険証を一体化させ、24年秋口に健康保険証の廃止を目指すものです。
これに伴い、同カードによるオンライン資格確認を受けることができない状況にある方については、必要な保険診療が受けられるよう、本人からの求めに応じて「資格確認書」が提供される予定です。
④は、戸籍や住民票の氏名に振り仮名を付けることを記載事項に追加することで、医療保険者の確認事務がより確実に行えるようになります。
マイナンバーカードの記載事項等にも追加することで、各種手続きの本人確認の効率化を可能とします。
これらの制度改正に加え、政府は働き方改革の一環として、いわゆる「130万円の壁」の解消に向け、短時間労働者への被用者保険の適用拡大を進めつつ、対応策の検討を行う予定で、目の離せない1年となりそうです。
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前年の出生数が過去最少に
新しい年度を迎えました。
新社会人になられた方、転職、異動、転勤をされた方など、生活や住環境にさまざまな変化がある時期です。
そうした中、政府は新型コロナウイルス感染症対策について、①3月1日から中国からの入国者・帰国者への水際対策を緩和②感染予防のためのマスクの着用については13日より新たな指針を適用し、屋内外を問わず個人の判断に委ねる③5月8日には感染法上の分類を季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる―ことを決めました。
発生から3年余を経て、こちらも平時に向けて大きな変化がありました。
社会が全体として平時に戻りつつある中、厚生労働省は2月末に「人口動態統計速報(2022年12月分)」を公表しました。
今回の発表で、2022年の年間の出生、死亡、婚姻、離婚などの速報値が分かります。
それによると、出生数は79万9728人と前年より4万3169人減少し、過去最少を記録した一方で、死亡数は前年より12万9744人増加の158万2033人で過去最多に。
出生数と死亡数の差である自然増減数は、△78万2305人で過去最大の減少となりました。
少子化の加速は、単に人口が減少していくだけでなく、社会保障制度においても、高齢者を支える現役世代の将来的な減少につながります。
この危機的な状況に政府も少子化対策に本腰を入れて取り組み始めたところです。
3月末までには具体策を打ち出す方針ですが、子育て世帯への負担軽減や経済支援、仕事と育児の両立に向けた男性の育児休業取得率を向上させる働き方改革が焦点となりそうです。
少子化・高齢化等の人口問題は、日常生活で感じる機会は少ないと思います。
しかし、わが国の経済・社会保障の両面において大きな影響を及ぼす可能性を包含しています。
それはご自身やご家族の将来、勤務先にも及ぶかもしれません。
日頃から関心を持ってもらいたいと思います。
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平時に向けて政策を大転換
新型コロナ、「2類相当」から「5類」へ
平時に向けて政策を大転換
新型コロナウイルス感染症は、年末年始をはさんで全国で急増し、「第8波」の到来と位置付けられました。
この第8波の特徴は、特に持病がある高齢者らを中心とした死亡者数の増加です。最近は減少傾向にありますが、海外からの渡航者の増大もあり、予断を許しません。
一方、政府は1月27日に感染症対策本部の会議で、新型コロナウイルス感染症の法律上の位置付けを、特段の事情がない限り、大型連休明けの5月8日から現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行することを決定しました。
現在、入院の受け入れや診療ができるのは感染症指定医療機関や発熱外来など一部の医療機関ですが、「5類」移行後は、幅広い医療機関で対応できるよう、段階的に移行する方針です。
また、これまでの入院や検査に係る費用は全額公費負担でしたが、「5類」移行後は原則、一部が自己負担になります。
しかし、受診控えが起きることが懸念されるため、当面は公費負担を継続した上で段階的に見直していく方針です。
マスクの着用については、13日から屋内外を問わず、原則、個人の判断に委ねることを基本としつつ、配慮すべき事例を示しました。
今回の「5類」への移行で、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置などの行動制限ができなくなり、3年余にわたって社会経済活動に影響を及ぼしてきた新型コロナ対策は「平時」に向けて大転換を迎えることになります。
政府はウィズコロナを維持しつつ、平時に戻すことにより、さらに経済を積極的に回していく方針を決定したわけですが、一般的にみれば唐突感があるかもしれません。
特に昨年後半からの全国的な感染者数の激増で、わが国は世界でも上位の約3300万人(累計)を抱える状況です。
また依然として世界中からさまざまな変異株が報告されており、今後も感染の動向を慎重に見守っていく必要があります。
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少子化対策に向けて本腰
出産育児一時金の引き上げなど
少子化対策に向けて本腰
昨年末に総務省が公表した卯(う)年生まれの人口は約997万人で、男性485万人、女性513万人、十二支の中では10番目の低さです。また、新成人の人口は約341万人ですが、成人にかかる民法改正により、18歳(112万人)、19歳(113万人)、20歳(117万人)を含めたものとなっています。この数値からも少子化が進んでいるのが見て取れます。
政府の全世代型社会保障構築会議(座長・清家篤氏)は昨年12月16日、社会保障の取り組むべき課題や今後の改革の工程を明示した報告書を取りまとめ、岸田文雄首相に提出しました。
報告書では、こども・子育て支援について、足元の課題として、「出産育児一時金の引き上げと出産費用の見える化」等を掲げるとともに、今年早急に具体化を進めるべき事項として、こども・子育て支援の安定的な財源について、企業を含めた社会全体で連帯し、公平な立場で広く負担し、支える仕組みの検討を指摘しています。
国の審議会である医療保険部会も、出産時に公的医療保険から支給される「出産育児一時金」を来年度に42万円から50万円に引き上げ、その財源の一部を現役世代の負担軽減のため75歳以上の後期高齢者の保険料を増額して対応する案が了承されました。
今回の負担増については激変緩和措置が取られ、保険料の賦課限度額と所得割のかかる一定所得以下の人の保険料を25年度まで2年かけて段階的に引き上げます。
岸田首相は年頭の記者会見で「異次元の少子化対策」を行うと異例の発言を行いました。
政府も少子化対策が避けられない緊急の課題だと認識し、今後財源の手当てを含め、本腰を入れて取り組む方針です。
その他、先の報告書では、「勤労者皆保険の実現に向けた短時間労働者の被用者保険適用拡大」、「かかりつけ医機能を発揮するための制度整備」など重要な課題が盛られており、今後の動向が注目されます。
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今年も制度改正の議論を継続
少子高齢社会における制度維持に向け
今年も制度改正の議論を継続
謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
本年も健保組合・健保連は、皆さんの健康維持・増進のための事業をはじめ、将来も安心して医療が受けられる医療保険制度の実現に向けた活動に取り組んでまいります。
厚生労働省は昨年11月末、2020年度の医療機関に支払われた医療費の総額である国民医療費が42兆9665億円、国民1人当たりで34万円強――と過去最高であった前年度に比べ、3.2%減少していることを公表しました。
減少の主な理由は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う受診控えの影響とみられています。
ただし構成割合をみると、65歳以上が全体の61.5%、うち75歳以上が39.0%といずれも前年度を上回りました。
少子高齢化の進展に伴い、高齢者の医療費の割合が増大しており、それはそのまま現役世代の負担増につながります。
既にお伝えしたとおり、「全世代型社会保障制度」の構築に向けて、昨年はいくつかの制度改正が行われましたが、今年も引き続き、「かかりつけ医」の制度整備、介護保険制度の見直し、さらに年金制度の見直しに向けた議論も進みそうです。
さて、今年の干支は「癸卯(みずのとう)」。
癸には「物事の終わりと始まり」を意味するほか「春間近でつぼみが花開く直前」の意味も、卯には「冬の門が開き、飛び出る」という意味があり、癸卯はこれまでの努力が花開き、実り始めるというイメージです。
過去の卯年をみても、時代の終わりや始まりを告げる出来事が多く起きているとのことです。
この3年間、コロナ禍で従来の生活に制限がかかり、息苦しい状況にありました。昨年から徐々に通常の生活に戻りつつありますが、第8波の到来もあり予断を許しません。
干支の意味するとおり、今年こそコロナ禍が一日も早く収束するとともに、将来を見据えた持続性のある医療保険制度の構築に向けて、大きく踏み出す年にしたいものです。
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健保組合全国大会を開催
喫緊の4課題をスローガンに掲げ 健保組合全国大会を開催
今年も年の瀬を迎えました。
振り返ると、この1年ほど将来への不安と不透明さを感じた年はなかったのではないでしょうか。
コロナ禍が3年目を迎える中、2月のロシアのウクライナへの侵攻は世界の平和と経済の足元をすくいました。
その影響で食料品や日用品などの相次ぐ値上げ、物価の急上昇に加え、異常気象による自然災害の増加、少子高齢化の進行に伴う人口減少など、枚挙にいとまがありません。
2022年は健康保険法制定から100年となる節目の年です。
一方、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり始める年でもあり、本年から今後数年が、わが国の医療保険制度の大きな分岐点になるといっても過言ではありません。
健保組合・健保連は10月18日、全国大会を都内で開催しました。
3密を避けるため開催時間を縮め、参加者を限定するなど感染防止対策を徹底し、オンラインによる同時配信も実施しました。
大会のテーマは「―健康保険法制定100年―これからも健康を支え、皆保険を守る健保組合であるために」。
その実現に向けて、①現役世代の負担軽減、全世代で支え合う制度への転換、②国民が身近で信頼できる「かかりつけ医」の推進、③オンライン資格確認などICT化の推進による医療の効率化・質の向上、④健康寿命の延伸に向けた保健事業の更なる推進――の4つの目標をスローガンに掲げました。
政府も、この主張に沿った社会保障制度の改革の議論を進めており、年末に「報告」を取りまとめ、この報告を踏まえ、年度内に中長期的な課題に関する具体的な改革事項を工程化する予定です。
コロナ禍の3年間で私たちの生活や社会は一変しました。
その中で医療提供体制の脆弱性や社会経済低迷の影響による現行制度のほころびがあらわになりました。
来年こそはこれらの問題が少しでも解消し、明るい年となることを期待したいものです。
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全世代型社会保障制度の議論始まる
全世代型社会保障制度の議論始まる 年末までが見直し議論の山場
10月から、食料品や日用品の相次ぐ値上げラッシュに、財布のひもを固くする人も多いのではないでしょうか。
長引くコロナ禍とロシアによるウクライナ侵攻が世界経済にもたらす影響の大きさを見せつけられた気がします。
一方、同月から現役並み所得者を除く75歳以上の一定以上の所得がある人の医療機関の窓口負担が従来の1割から2割に引き上げられ、また、パートなど短時間労働者の被用者保険への適用拡大など、医療や年金の制度改正が行われました。
その背景を象徴する統計データも立て続けに公表されました。9月16日の「2021(令和3)年度医療費の動向」では、医療保険などの概算医療費が前年度比4・6%増の44・2兆円と、新型コロナ感染症の影響による患者の受診控えで同3・1%減少した20年度の概算医療費の反動などで、過去最大の増加率・額となったことが明らかに。
同日は、21年度の人口動態統計の確定数も公表され、女性が生涯に産む子どもの平均数を示す合計特殊出生率が前年から0・03ポイント減の1・30で6年連続の低下と、確実に少子化が進んでいることが浮き彫りになりました。
一方、総務省が18日に公表した65歳以上の高齢者数は3627万人と過去最多で、総人口の29・1%を占め、国際比較でもわが国が最も高い比率であることが分かりました。
こうした状況を踏まえ、政府の「全世代型社会保障構築会議」は9月から本格的に議論を開始しました。
既に2回の会合を経て今後、「子ども・子育て支援の充実」「医療・介護制度の改革」「働き方に中立な社会保障制度等の構築」の3テーマを中心に議論を重ね、年末に向けて報告を得る方針です。関連する他の審議会などでも本格的な議論が始まっています。
議論の結果に基づき24年に予定されている法律改正のスケジュールなどを考慮すると、まさに年末までが制度見直し議論の山場といえます。
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がん検診で早期発見・早期治療を
自身や家族の健康のために
がん検診で早期発見・早期治療を
「コロナ禍でも、がんは待ってくれません。」――
これは日本対がん協会主催の本年度「がん征圧月間」のポスターのコピーです。
同協会は毎年9月をがん征圧月間として、がん検診の普及活動を行っています。
同様に10月は国が主体の「がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン月間」や同趣旨の「がん対策推進企業アクション」があります。
わが国のがん検診は、諸外国に比べ受診率が低く、特に女性では検診項目にもよりますが30~40%台で、政府の第3期がん対策推進基本計画の目標値である検診受診率〝50%以上〟とは大きな開きがあります。
そのため、「経済政策の方向性に関する中間整理案」(2018年)の主要項目にがんの早期発見の推進を掲げ、検診受診率の向上に向けた取り組みの検討を挙げています。
がんは年齢や性別により発症リスクが異なりますが、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性65・0%、女性50・2%で約2人に1人、がんで死亡する確率は男性26・7%(約4人に1人)、女性17・9%(約6人に1人)。がんは既に日常的な病気といえるでしょう。
世論調査(16年)でがん検診未受診の理由を聞くと、「受ける時間がないから」「健康状態に自信があり、必要性を感じないから」「心配なときはいつでも医療機関を受診できるから」が上位を占めましたが、改めてみると検診を避けるための言い訳のようにもみえます。
昭和の頃は、がんは助からない病気と恐れられていましたが、医療技術の進歩により今では早期発見・早期治療で完治できる場合が多く、多くのがんで5年生存率も伸びています。
コロナ禍の中であっても、医療機関や健診機関では、予約制や人数調整などによる「密」の回避、検温や消毒なども徹底され、感染防止対策をしっかり行っています。
是非、ご自身やご家族の健康のためにもがん検診を受けましょう。
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コロナ禍での体力低下等を懸念
コロナ禍での体力低下等を懸念 新生活様式に健康への気遣いを
一時は減少傾向にあった新型コロナウイルス感染者数は7月に入ると、オミクロン株の変異株(BA.5)により一気に感染が拡大し、あっという間に第7波を迎え、累計感染者数は14日に1,000万人の大台に達しました。
一時は1週間の新規感染者数が前週比73%増の約96万9,000人(世界保健機関(WHO)公表)と、わが国が世界最多となったこともありました。
政府は感染力が強くても重症者や死亡者が少ないことから、社会経済活動にブレーキをかけるまん延防止等重点措置などの行動制限については当面行うことはないとしています。
しかし、この感染拡大により夏休みに帰省や遠方に出掛ける計画を立てていた人の中には、自主的に行動を自粛された方も多かったのでは。
一方で連日の酷暑で外出もままならず、また電力不足の懸念から省エネが叫ばれつつも、熱中症対策でエアコンの電源を入れたままにせざるを得ない状況の人も多かったと思います。
気になるのは、その間の体力の低下や気分転換のあり方です。
新型コロナの感染拡大を契機に外出時のマスク着用や3密の回避、テレワークの推進などニューノーマルな生活様式が定着しました。
これからはそこにちょっとした健康への気遣いが必要かもしれません。
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骨太方針にみる今後の社会保障
かかりつけ医機能の制度整備など骨太方針にみる今後の社会保障
政府が6月に決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)には、健保組合、健保連が長年主張してきた事項の多くが取り込まれました。
その最たるものが、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」です。
かかりつけ医という言葉自体は一般に浸透していますが、実はこれまで明確な定義や根拠がありませんでした。
今後、コロナ禍の教訓も踏まえ、かかりつけ医に求められる機能が制度上明確に定められ、その機能を備えた医療機関(医師)を国民が探し、選びやすくするためのさまざまな環境整備が順次進められ、安全・安心で効率的・効果的な医療が受けられることが期待されます。
また、社会保障分野でのDXを含む技術革新を通じたサービスの効率化・質の向上が指摘され、前月紹介したもの以外では、オンライン資格確認の推進が挙げられます。
保険医療機関・薬局に対し来年4月以降の導入を原則義務化するとともに、24年度中を目途に保険者の保険証発行の選択制の導入および、オンライン資格確認の導入状況等を踏まえて、原則保険証の廃止を目指すとの方針が明記されました。
これを受けて厚生労働省から健保組合に対し、マイナンバーカードの取得や同カードの健康保険証利用申し込みへの協力依頼の通知がされたところです。
このほか、4月の診療報酬改定で導入されたリフィル処方箋についてもその普及・定着の実現を目指すとしています。
同処方箋の解禁を主張していた健保連も6月下旬にホームページに、その仕組みや活用に当たっての留意点などを掲載し理解と周知を行いました。
骨太方針には少子化対策、全世代型社会保障の構築など各分野で盛りだくさんの項目があります。
7月の参議院選挙は与党が圧勝し、いわゆる「黄金の3年間」が始まるといわれていますが、この間政府には早急に解決すべき医療保険制度の課題を確実に実行してもらいたいものです。
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社会保障全体のDXを推進
全世代型社会保障の「議論の中間整理」公表
社会保障全体のDXを推進
最近、「〇〇DX」という言葉を目にする機会が増えてきました。
このDXとはどういう意味で具体的に何を指すのでしょうか。
DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略語で、デジタル技術を活用し、ビジネスはもちろん私たちの生活を、あらゆる面でより良いものに変化させることを意味しています。
DXの必要性が高まった大きな要因の一つに、今回の新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。
長引く感染拡大により、わが国の働き方は大きく変わりました。
例えばテレワークの導入、WEB会議を用いた商談・打ち合わせ等のオンライン化は、その最たるものといえます。
新型コロナウイルスの感染が収まっても、このデジタル化の流れは後退することはないでしょう。
5月17日、全世代型社会保障構築会議は議論の中間整理を公表しました。
この中で注目されるのは、「社会保障全体のDXを進めるべき」との記載です。
国民がより質の高い医療、介護等のサービスを享受できるように、患者のカルテの電子化・共有と活用が重要であるとし、具体的にはマイナンバーカードで利用できる健康データや電子カルテ情報等規格化されたデータの連携・活用に向けた環境整備などを掲げています。
この中間整理は、政府が6月7日に閣議決定した「骨太の方針2022」にも盛り込まれました。
わが国の民間における規格の標準化の例として、各社の交通系カードが全国ほとんどの鉄道・バスで使えるようになったことで、利便性が高まりました。
ところが、医療の世界では各医療機関がシステムを構築しても、データを共有する共通の規格がないため、私たちは電子化のメリットが享受できない状況です。
最もDXが遅れている分野の一つといっても過言ではありません。
中間整理と骨太の方針は、この実態に一石を投じたもので、少子高齢化が進む中、オンライン資格確認等の環境整備も含め、国民にとって利便性が高まるようDXの推進が期待されます。
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コロナで高齢者拠出金減少すれど
コロナで高齢者拠出金減少すれど健保組合財政は依然赤字基調
今年のゴールデンウイークは新型コロナウイルスの感染が続く中で、3年ぶりに行動制限がなく、多くの人たちが久しぶりに帰省や国内外旅行に出掛けました。
観光地にも多くの人が訪れにぎわい、高速道路も大渋滞になるなど、家族サービスで疲れながらも、この連休を満喫した人は多かったのではないでしょうか。
とはいっても、その後の新型コロナの感染は収まらず、日常生活では引き続きマスクの着用や手洗いの励行などの対策が必要です。
政府もコロナワクチンの3回目接種率の向上と並行して4回目接種の検討に入っています。
この時期、気になる調査結果が公表されました。
一つは、毎年総務省が5月5日の「こどもの日」にちなんで公表する4月1日現在の15歳未満の子どもの数の推計です。
全国の子どもは1465万人で前年に比べ25万人少なく、1982年から41年連続の減少。
総人口に占める割合は11.7%で48年連続の低下です。
このことは将来の社会を支える働き手が減少していくという切実な問題を浮き彫りにしています。
もう一つは、健保連が4月28日に公表した22年度健保組合予算の早期集計結果です。
同年度の経常収支は全体で2770億円の赤字で健保組合の約7割が赤字となる見通しです。
この中で高齢者医療への拠出金だけが前年より2080億円(5.7%)減っています。
これは2年前の新型コロナ感染拡大時に、高齢者の受診控えなどによる医療費減に伴う精算の影響によるもので、一時的かつ極めて異例なものです。
来年度以降は、この拠出金減少の反動に加え、団塊世代の75歳到達などにより、高齢者医療への拠出金が急増することが予想され、急激な財政悪化が懸念されます。
政府にとっては、少子化対策をいかに実効性のあるものにしていくのか、高齢者医療費の急増や医療保険制度存続の危機にどう対応していくのか、待ったなしの状況が続きます。
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少子化の加速で社会保障制度に危機
少子化の加速で社会保障制度に危機長引くコロナ禍が大きく影響
新型コロナウイルス対策としてのまん延防止等重点措置は、当初の31都道府県から徐々に規制が解かれ、3月21日には全国で解除。
その後、感染者数は漸減傾向にありましたが、人出が増えたことにより増加に転じた地域も出てきました。
専門家の間では感染力がより強いとされるオミクロン株の別系統「XE」などによる感染拡大を懸念する向きもあり、感染防止の基本対策を当面、続けていく必要があります。
そうした中、厚生労働省が先ごろ公表した2021年の人口動態統計速報によると、出生数は前年比約3万人減の84万2897人で過去最少に、一方死亡数は6万8千人増の145万2289人と戦後最多となったことが明らかになりました。
この結果、人口は61万人弱の減少となります。
こうした状況は、今回のコロナ禍が大きく影響しているものと思われ、将来への不安から妊娠を控えていることも少子化の加速に拍車を掛けているようです。
さらに出生数に直接関わる婚姻数も減少傾向が続き、21年は51万4千組強と戦後最少を記録しました。
この状況は、将来の社会保障制度の維持に大きな影響を与えかねません。
私たちの生活を守る社会保障制度は主に現役世代の支え手で成り立っているからです。
医療や年金、介護など各制度の財源は保険料、税金、医療の受診時や介護の利用時の自己負担で構成され、その保険料や税金の負担の多くは現役世代によるものだからです。
昨年生まれた子どもが制度の支え手になるのは約20年後。
既にわが国の人口は09年から減少しており、このまま手をこまねいていれば、遅からず制度の破たんを迎えます。
以前から指摘されていた団塊の世代(1947年~49年生まれ)が全員、75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」を目前に、政府にはこの問題から目をそらすことなく、真摯(しんし)に受け止め早急に対策を打ってもらいたいものです。
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国民皆保険の意義を考える
健康保険法制定100周年の年に国民皆保険の意義を考える
国民皆保険制度――。
これはわが国の住民が何らかの公的医療保険に加入する制度です。
同制度は国民健康保険が全国で整備された1961年から始まり昨年60周年を迎えました。
これにより誰もがいつでもどこでも1〜3割の自己負担で保険医療機関を受診することができます。
当たり前のように思えるかもしれませんが、実は世界でも類をみない画期的な仕組みなのです。
同制度が戦後、国民の健康状態の向上に大きく寄与し、短期間で平均寿命を世界のトップレベルに押し上げたといっても過言ではありません。
公的医療保険は、サラリーマンや公務員等が加入する被用者保険(健保組合、協会けんぽ、共済組合等)、自営業者や年金受給者等が加入する国民健康保険の2つに大別され、それとは別に75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度があります。
このうち、健保組合、協会けんぽの設立や事業等に関する根拠法が健康保険法です。制定されてから今年で100周年を迎えます。
健康保険法は1922(大正11)年4月22日に公布された古い法律です。
同法により設立された健保組合は労使協調の下、その業務は単に医療費の支払いのみでなく、ウオーキング大会や健康教室の開催、健康診断や人間ドックの実施等加入者の健康の維持・増進を図るための事業を行うことで、わが国における健康長寿社会の形成に大きな役割を果たしてきました。
100年の間、特にこの数十年は少子高齢化が急速に進み、バブル崩壊後の長引く経済停滞など大きく社会・経済の環境が様変わりしました。
その結果、増大し続ける高齢者の医療費を支援する現役世代の負担が急増し限界に達しようとしています。
この状況が今、国民皆保険制度の足元を危うくしています。制度の根幹を維持しつつも現状に沿った思い切った改革を早急に行う必要があります。
一度崩壊してしまった制度を再構築するのは至難の業です。この100周年の年に国民皆保険の意義を改めて考えてみてはどうでしょう。
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猛威を振るうオミクロン株
猛威を振るうオミクロン株日常生活に広がる悩み・不安
新型コロナウイルスは年明け早々から新種の「オミクロン株」が猛威を振るい、感染が全国に急速に拡大しました。既に1月7日、「まん延防止等重点措置」が沖縄、山口、広島の3県に適用され、18日には1都12県に拡大したことは先月小欄でも触れましたが、25日には1道2府15県を同措置の対象地域に拡大。
全国の7割強に当たる34都道府県に一気に広がりました。
この現状に政府も、高齢者への3回目ワクチン接種に着手し、3月以降は65歳未満の人への接種を前倒したほか、オミクロン株が30歳代以下の若年世代で目立っていることから、接種の対象外であった12歳未満の子どものうち5~11歳の希望者にも接種を行うこととしました。
そのほか、医療機関の業務やベッド数がひっ迫していることから、濃厚接触者の自宅や宿泊施設での待機期間の短縮などの対応に立て続けに追われました。
こうした状況に対する国民の不安は国の調査にも如実に表れています。
内閣府の「国民生活に関する世論調査」(1月7日公表)によると、日常生活で悩みや不安を感じている人は77.6%にも上りました。
具体的な内容(複数回答)は、「自分の健康」が60.8%と高く、次いで「老後の生活設計」(58.5%)、「今後の収入や資産の見直し」(55.0%)、「家族の健康」(51.6%)などの順。今後の生活に力点を入れる分野も「健康」(69.5%)、「資産・貯蓄」(37.9%)と続きます。
この調査で注目されるのは、政府への要望(複数回答)です。「新型コロナ感染症への対応」(65.8%)、「景気対策」(55.5%)、「高齢社会対策」(51.2%)を押さえて第1位となったのは「医療や年金等の社会保障の整備」(67.4%)でした。
政府にはこの結果を真摯(しんし)に受け止め、一刻も早い新型コロナ感染症の収束に向けた機動的な対応を求めるとともに、並行して将来の生活不安を解消するため、社会保障制度の早急な整備(改革)を進めてもらいたいものです。
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感染者激増で幕を開けた2022年
感染者激増で幕を開けた2022年山積する難題をどう解決するのか
2022年はオミクロン株による新型コロナ感染者の激増で幕を開けることになりました。
感染力が非常に強いオミクロン株は世界中で猛威を振るっていますが、わが国では昨年11月末に海外からの渡航者から発見されたのを機に、国内でも12月中旬から感染者が徐々に増えはじめ、感染経路が特定できない市中感染が増えるなど、感染の再拡大が懸念されていました。
年末年始は2年ぶりに故郷で過ごす人たちや観光客も増え、経済にも明るい兆しがみえたのですが、年が明けるとわずか1週間で感染者が激増。
政府は増加が著しい沖縄、山口、広島の3県を「まん延防止等重点措置」の対象としましたが、さらなる拡大を受け1都12県を追加しました(1月19日現在)。
第6波に突入したとの見方もあり、予断を許さない状況が続きます。
また、22年は社会保障制度にとっても大きな問題を抱えています。
団塊の世代が今年から25年にかけて75歳に到達するからです。
75歳以上が加入する後期高齢者医療制度には現役世代の保険料から4割強の支援を行っており、今後その負担が現役世代に重くのしかかってきます。
既に一定の所得のある後期高齢者の方には10月から窓口2割負担が導入されますが、対象者は一部に限られ焼け石に水の感があります。
今後、残された時間が少ない中で、政府が新型コロナの収束に向けた対策や安定した社会保障制度の構築など、山積する難題にどう最適解を導き出すのか注視していく必要があります。
最後に少し明るいニュースを。
セルフメディケーション税制は昨年末までの限定措置でしたが、引き続き26年末まで5年延長されました。
健康管理の取り組みに関する書類の確定申告書への添付も不要(ただし5年間保存)となり、簡便化されました。
なお、従来のOTC医薬品の医療費適正化効果が薄いものを対象外とする他、逆に同効果の高い医薬品が追加されました。
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未来を見据えた制度の構築を
「かかりつけ医」の推進・制度化など未来を見据えた制度の構築を
謹んで新春のごあいさつを申し上げます。
本年も健保組合・健保連は、皆さんの健康維持・増進のための事業をはじめ、将来も安心して医療が受けられる医療保険制度の実現に向けた活動に取り組んでいきます。
厚生労働省は昨年11月、2019年度に医療機関に支払われた医療費の総額である国民医療費が約44・4兆円、国民1人当たりで35万円強――といずれも過去最高を更新したことを公表しました。
増大した主な理由は高齢化の進行と医療の高度化によるものですが、65歳以上の医療費は27・6兆円と全体の6割強を占めています。
今年から団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始めることから、医療費が急増し、現役世代の負担が急速に増えることが懸念されています。
そのため、後期高齢者の窓口負担に新たに2割負担を設け、一定以上の所得のある高齢者に相応の負担をしてもらうことが決定していますが、限定的な範囲にとどまっており、これだけでは不十分であり再検討が必要です。
また、今回のコロナ禍での経験を生かし、国民が身近で安心して受診できる「かかりつけ医」の推進・制度化を含め、現在の社会保障制度をあらゆる面から検証・見直し、安定した持続性のある仕組みを早急に構築していく必要もあります。
さて、今年の干支は「壬寅(みずのえとら)」。壬には「陽気を孕(はら)み」、寅には「春の胎動を助く」という意味があり、厳しい冬を越えて春の芽吹きは生命力に溢れ、新しい成長の礎となるイメージだそうです。
この2年間、コロナ禍で普通の生活を謳歌(おうか)できず、息苦しい状況にありました。
幸いにもわが国では昨秋から新型コロナ感染者数が激減し、新規感染者数も低い数値で推移していますが、新たな変異株が確認されるなど当面は予断を許しません。
干支の意味するとおり、1日でも早くコロナ禍による閉塞(へいそく)的な現状が打開され、少子高齢社会の未来を見据えた医療保険制度の構築に向けて、大きく踏み出したいものです。
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来年は健康保険法制定100周年
来年は健康保険法制定100周年 健保組合も社会の変化に対応
年の瀬が迫ってきました。
振り返ってみれば、一昨年の今頃に新型コロナウイルスの発症が確認され、その強い感染力と致死率の高さで世界中を震撼(しんかん)させてからはや2年がたとうとしています。
しかしわが国では、長期の感染予防対策と急速なワクチン接種の浸透が功を奏したのか、9月に入り感染者数が減少し始め、政府は10月に5回目の緊急事態宣言等を全国一斉に解除しました。
幸いにもその後、感染者数は低く推移。経済や人びとの生活にも明るさがみえ始めてきました。
新型コロナの収束がみえてきたのは喜ばしいのですが、その一方でわが国の深刻な少子高齢化は進んでいます。
団塊の世代が全て75歳以上となる「2025年」が迫り、大きな難局に直面しているのです。
健保組合・健保連は10月19日、2年ぶりに全国大会を都内で開催しました。
3密を避けるため、開催時間を縮め、参加者を限定するなど感染防止対策を徹底し、オンラインによる同時配信も実施しました。
大会のテーマは、「未来のため、皆保険を守るため、全世代で支え合う制度の構築へ」です。
その実現に向けて、①国民が安心できる安全で効率的な医療の実現、②現役世代の負担軽減と世代間の公平性確保、③健康寿命の延伸に向けた保健事業のさらなる推進--の3つの目標をスローガンに掲げました。
同時に『安全・安心な医療と国民皆保険制度の維持に向けて』と題する提言を公表。
この中で日常生活を含む社会システムの変革が急速に進むいま、健保組合は加入者の健康を守るという使命を全うする上で、事業主との連携、加入者との距離の近さを生かし、WHO憲章が定義する肉体的、精神的、社会的--3要素が調和した真の健康である〝well-being〟の向上に努めていきます。
来年は健康保険法制定100周年という節目を迎えます。健保組合も、人生100年時代における働き方の多様化に対応したさらなる取り組みを行っていきます。
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コロナ禍でがん検診受診者数が激減
コロナ禍でがん検診受診者数が激減早期がんの発見遅れを懸念
新型コロナ感染者数が8月下旬から全国的に減少し続け、東京都では最高時の10分の1にまで下がったことなどを受けて、政府は10月1日、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を全国一斉に解除。
その後も感染者数は減少しています。
減少した要因に、高齢者の高いワクチン接種率に加え、若人世代への接種機会の拡大があるのは事実ですが、それ以外の要因はまだ究明されていません。
ワクチンの効果の持続期間という面から、ワクチン接種3回目の実施の検討を含め、将来に向けて各対策の効果検証を行う必要があります。
またワクチンは完全に感染を防止するものではないため、今後も引き続き人前でのマスクの着用や手洗い・うがいの励行などを継続していくことも必要です。
最近、気になる調査の結果が公表されました。
新規の胃がん患者や早期の大腸がん患者の診断数が減少する一方、診断時にがんのステージが進行、重症化したということです。
報告したのは横浜市立大学医学部の研究グループ。
コロナ禍の影響による受診抑制で新規の早期胃がん患者数、早期大腸がん患者数が新型コロナの感染が拡大した2020年3月以降を流行期として流行期前の期間と比較したところ、それぞれ28.9%、13.5%減少した一方で、診断時のステージ別では特に大腸がんのステージⅢは68.4%と進行した状態でがんが発見される例が増加したとのことです。
報告書は、過度な受診抑制を行わず、適切なタイミングで健診・医療機関を受診することが重要だと注意喚起しています。
頭では理解していても、新型コロナ感染が怖いと二の足を踏む人も多いことでしょう。
しかし、新型コロナの研究やワクチン接種も進んでおり、健診機関などでは、予約制や人数調整などによる「密」の回避、検温や消毒などの感染防止対策を取っています。
後悔しないためにも年1回は、自分の体をチェックしておきましょう。
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マイナンバーカードの保険証利用
「外で思いっきり遊びたいのに」「美味しいものを食べに行きたいのに」――ままならないもどかしさがちまたにあふれています。
新型コロナが収束しない中、特に飲食業、旅行業、旅館業などの業種では事業を縮小、廃止せざるを得ないところ、さらに廃業に追い込まれたところも数多くあり、社会全体に不安と諦念が満ちているのが感じられます。
一方、この自粛期間で生活様式が劇的に変化したことも事実です。
一つは人々の創意工夫によるサービス提供の変化です。従来の対面を中心としたサービスから、オンライン決済による通信販売や飲食デリバリー等ネットを活用した消費者へのサービスが充実してきました。
以前からこうしたサービスは存在していましたが、今回のコロナ禍が促進させた面を否定できません。
コロナ禍は図らずも政府によるICT化の推進も後押ししました。
その一環としてテレワークの推進は従来の働き方の概念を大きく変えました。WEB会議の導入や行政機関への電子申請や提出書類への押印廃止、医療におけるオンライン診療の推進なども始まっています。
以前、国はマイナンバーカードを健康保険証として利用したオンライン資格確認の4月実施に向けたプレ運用を開始すると紹介しました。
実はシステムの不具合などが重なり延期され、この10月からスタートします。
現在急ピッチでマイナンバーカードの取得促進やオンライン資格確認システムへの入力作業を行っています。
1年余で退陣した菅義偉前首相肝いりのデジタル庁も9月1日に発足しました。
今後、利用者である国民の目線に立った信頼・安心かつ使いやすいシステムを構築することができるかどうかが問われます。
政府が提唱するデジタル化を実現し、ポストコロナの新しい社会をつくることへの試金石になるといってもよいでしょう。
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緊急事態宣言は拡大、延長へ
若い世代中心に感染者が激増
緊急事態宣言は拡大、延長へ
新型コロナウイルスの感染者数が増大している中で、東京五輪が開催され、17日間の熱戦を繰り広げ幕を下ろしました。
その間、新規感染者数は7月29日、全国で1万人を突破、2週間後の8月13日には2万人を超えました。
関東では東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県で過去最多を更新、関西でも大阪府を中心に拡大し続けています。
特に都市部の繁華街では若い世代を中心に人出が増え続け、度重なる緊急事態宣言で自粛効果が機能しなくなったかのようにみえます。
この状況に、政府はさらに緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の対象を拡大しましたが、新型コロナの感染拡大は収まらず、8月17日には緊急事態宣言に7府県追加の13都府県、まん延防止等重点措置に10県追加の16道県に拡大。
期間も9月12日まで再延長しました。
新型コロナの感染拡大が収まらない原因の一つに、1年以上にわたる自粛生活を強いられた若い世代を中心に、「もう限界」という心理が強く働いていることがあげられます。
政府も対応を検討していますが、これといった決め手を欠きこのままでは、自粛疲れからの緊張の緩みによる人流の増加に歯止めがかからず、感染者が激増し続けることが危惧されます。
期待されているワクチン接種は、2回接種した高齢者の割合が7月末に8割を超え、高齢者の感染者・重症者数は大幅に減っていますが、若い世代にはワクチンの供給量が十分でないこと、また一部では副反応を警戒し接種に積極的でないことや、感染力の強いデルタ株の猛威などが、感染増加に拍車を掛けている一因になっています。
医療では、感染への懸念による医療機関への受診の減少で医療費が対前年度比で若干減少傾向にあります。
一方で活動自粛による経済の停滞で保険料収入が減少している健保組合も多く、今後、受診控えによる重症者の増大などで医療費の急増が予想されるなど、健保組合にとっても予断を許さない状況が続きます。
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リテラシーを高め正しい判断を
ワクチン接種に伴い流言拡大 リテラシーを高め正しい判断を
政府が推し進める新型コロナのワクチン接種。
6月末時点で累計接種回数は4491万回(うち2回接種者は1526万人)に達しました。
わが国の総人口の約4分の1に当たる23.3%が1回接種を受けたことになり、65歳以上では6割強(2回接種は3割弱)と接種者が加速的に増加しています。
気になるのは接種者が増えるのと並行してSNSなどで事実でないことが拡散されていることです。
「ワクチンにはマイクロチップが含まれているから監視される」「ワクチンを打つと不妊になる」――など。
また6月23日、接種後に死亡された人の数が277件と国の審議会で公表されると、若い世代を中心に副反応が怖いのでワクチン接種を受けたくないなどの声が巷(ちまた)にあふれ、マスコミもこの現象を多く取り上げました。
実際には亡くなった人とワクチンの因果関係が認められない、判断できない事例がほとんどであるにも関わらず、数字だけが一人歩きした格好です。
河野太郎ワクチン担当大臣もデマであり事実と違うことを拡散しないようにと注意喚起を促しました。
今、デマに惑わされず、正しく現実を判断するためには「ヘルスリテラシー」が必要です。
リテラシーとは、膨大な情報の中から必要な(信頼できる)情報を抜き出し、活用する能力のことをいいます。
「ヘルスリテラシー」は、健康や医療に関する多くの情報から、信頼できる確かな情報を扱うことができる能力です。
現在、インターネットなどでは膨大な情報があふれています。
自分が知りたいかつ信頼できる情報を得るためには、①情報の発信源はどこか(公的な機関か、個人か)②いつ発信(公表)された情報か③情報に隔たりがないか(情報の一部だけを切り抜いて誇張していないか)④商業目的ではないか――などに注意して、ネットで検索するときは、複数のキーワードで行うなど、冷静にリテラシーを高めていくことが求められます。
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「かかりつけ医」のあり方に一石
新型コロナ収束後の対応を含め「かかりつけ医」のあり方に一石
政府が毎年6月後半に策定する「骨太方針」。
骨太方針は来年度の予算編成や今後の制度改革の方向性を決める重要な基本方針です。
それに大きな影響を与える経済財政諮問会議(議長:菅義偉内閣総理大臣)が4月下旬に社会
保障制度をテーマに開催されました。
議題のうち注目されるのは、コロナ禍への対応とこれを踏まえた今後の少子化対策を含む社会保障制度改革です。
麻生太郎議員(財務大臣)は、少子化は国難というべき大きな問題で、将来の子どもに負担を先送りすることのないよう安定財源を確保し取り組みを進めるべきと述べたほか、「医薬品の保険給付範囲の見直しを行うとともに医療費適正化対策のあり方の見直し」「後期高齢者医療制度のさらなる改革を通じた現役世代の負担の軽減」「かかりつけ医の制度化等の推進」などを骨太方針にしっかり反映していただきたいと、医療保険制度が直面している課題と健保組合の現状を踏まえた発言をしています。
今回のコロナ禍の実態を踏まえ、今後国民が安心できる安全で効率的な医療の実現が求められます。
麻生議員の発言の中で特に注目されるのが「かかりつけ医」の制度化です。
「かかりつけ医」という言葉はかなり以前から使われ浸透している言葉ですが、実は明確な定義がありません。
そのため、かかりつけ医を探そうとすると、具体的にどうしたらよいか分からない人が多いのではないでしょうか。
発言はこれに一石を投じるものです。健保連も6月7日に公表した「骨太方針」に対する要望書で、かかりつけ医の推進を盛り込んでいます。
今回の発言をもとに、あらためて国民が求める「かかりつけ医」の機能とは何かを明確にし、これを推進していくために制度化の枠組みを検討していく必要があります。
そのためにも国民の理解が欠かせません。併せて、かかりつけ医の情報の見える化を進めていくことが求められます。
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新型コロナによる経済停滞で
新型コロナによる経済停滞で健保組合の約8割が赤字を計上
新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。
特に関西圏を中心に感染が拡大。
その背景には感染力の強い変異株の増大や「自粛疲れ」の反動による繁華街での人出の増加があります。
政府は4月1日、大阪、兵庫、宮城の3府県を対象にまん延防止等重点措置を初適用し、各府県内の感染が拡大している市を適用地域として4月5日から5月5日までの実施を決定しました。
同措置は、国民生活や経済活動に大きな影響を与える緊急事態宣言を回避するための措置ですが、変異株の勢いは衰えず、重点措置の地域を拡大。
この状況下に政府は23日、感染状況が深刻な東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に3度目の緊急事態宣言を発令、さらに愛知、福岡に加え北海道、岡山、広島の1道4県に拡大、5月末まで延長せざるを得ませんでした。
緊急事態宣言前日の22日、健保連は21年度の健保組合の予算早期集計結果を公表。
全健保組合の約8割が赤字予算で、その額はトータルで5千億円超です。
収支均衡に必要な財源を賄うための実質保険料率は初めて10%超となり、保険料に占める高齢者医療への拠出金の割合が50%超の健保組合が全体の4分の1を超えました。
今回の赤字は、新型コロナウイルスの影響による休業や時短などで保険料収入の原資となる報酬が前年度比で2167憶円(2.6%)も減少したことと、支出で高齢者医療への拠出金、特に75歳未満の前期高齢者の拠出金(納付金)が前年度比で約1千億円(6.5%)増の約1兆6500億円に膨れ上がったことが大きな要因です。
この結果、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2022年以降、拠出金の急増が懸念される「2022年危機」問題ですが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う財政悪化で、1年早く到来すると見られています。
今国会に上程されている世代間の負担の公平と現役世代の負担軽減を図る健保法等改正法案の早期成立と一刻も早い法律の施行が望まれます。
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被扶養者の検認調査の重要性
被扶養者の検認調査の重要性 医療費や納付金に大きな影響
健保組合の多くは新年度を迎えると、勤め先を経由するなどして、被保険者に「被扶養者資格確認調査(検認)」と呼ばれる調査を行います。
これは、被扶養者(扶養家族)が継続して健康保険の資格を有しているかを確認するためのものです。
3月、4月は卒業や就職の季節です。
お子さんが就職すると、就職先の企業の健康保険に加入するのですが、意外と多いのが、就職前に扶養家族として加入していた健康保険からの脱退手続き(被扶養者異動届の提出)を忘れているケースです。
そのほか、パートやアルバイト等により一定以上(年間130万円以上、60歳以上などでは180万円以上)の収入がある場合なども、被扶養者から外れます。
なぜ、検認を行うのでしょうか。
製造業の健保組合の例を紹介します。
この組合は昨年度、本社以外の関連企業の16歳以上の被扶養者と、本社勤務の被保険者と別居している16歳以上の被扶養者の計2751人を対象に検認を行いました。
その結果、被扶養者資格を失う人が121人。
その内訳は、既に被扶養者が就職していたケース60人、パート等の収入が一定額をオーバーしていたケース24人、その他が37人でした。
さらに、この人たちがこのまま健保組合に残った場合の医療費を試算しました。
結果は年間1182万円の増加です。
深刻なのは高齢者医療への納付金です。
試算では同3098万円で、合計4280万円という巨額となり、健保組合への財政に大きな影響を与えることが判明しました。
高齢者医療への納付金は、複雑な計算式で決められますが、その算定には被扶養者を含めた総加入者数が基礎になります。
そのため、被扶養者をきちんと把握し、正しく申請を行わないと、余分な拠出金(納付金)を納めることになり、ひいては皆さんが納める保険料の引き上げにつながります。
被扶養者の検認の調査を行うことの重要性は、まさにここにあるのです。
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健保法等改正法案を国会に提出
緊急事態宣言さらなる延長の中健保法等改正法案を国会に提出
新型コロナウイルスの感染拡大で1月7日に緊急事態宣言が発令されました。
政府は当初の2月7日までの期限を、栃木県を除いた10都府県で3月7日まで1カ月間延長することを決めました。
この間、感染状況や医療提供体制が改善されれば期限を待たずに解除される可能性もあります。
ワクチン接種など新型コロナ対策の行方が気になるところですが、政府は2月5日の閣議で、一定所得以上の後期高齢者(75歳以上)の医療費自己負担の2割引き上げなどを含む「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」の国会提出を決定しました。
この法案には現役世代にも影響を与える改正が含まれています。
1つは「傷病手当金の支給期間の見直し」です。
健康保険の支給期間は支給開始日から起算して復職して不支給となる日を含めて最大1年6カ月ですが、今回の改正で治療と仕事の両立を図る観点から、共済組合と同様に実際に支給された日を通算して1年6カ月に統一されます。
2つ目は「任意継続被保険者制度の見直し」。
任継被保険者の保険料は、退職前の標準報酬月額か全被保険者の平均標準報酬月額のいずれか低い額を適用することになっているため、健保組合の保険料収入が減る一方、高齢の退職者の給付が増えるため収支のアンバランスが問題視されていました。
改正では健保組合が規約に定めることにより退職前の標準報酬月額とすることを可能とするほか、任継被保険者の資格喪失要件が緩和され、最大2年間の被保険者期間を維持するなかで、任継被保険者からの申請による資格喪失を認めることとしています。
その他にも育児休業中の保険料免除要件の見直しなどが含まれており、法案が成立すれば、2022年1月1日施行の予定です。
改正案には加入者にとって、より良い改正と従来より厳しくなる改正がありますが、いずれも全世代対応型社会保障を目指した改革の第1歩であることは言うまでもありません。
【コラムは無断転載禁止】
感染者急増で再び緊急事態宣言
感染者急増で再び緊急事態宣言
出生数に影響、加速する少子化
政府は新型コロナウイルス感染者の急増で昨年末、年末年始を家で静かに過ごすよう国民に要請しましたが、1月に入っても増加に歯止めが掛かりません。
1月6日には全国の感染者数が6千人超と過去最多を更新。政府は7日、緊急事態宣言を再発令し、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に飲食店への営業時間短縮要請などを決定しましたが、13日には11都府県に拡大しました。
わが国の出生数は、女性の社会進出や晩婚化などで減少し続けていますが、新型コロナウイルスの感染拡大が出産を控える傾向に働き掛け、その結果、少子化が想定を超えて進んでいるようです。
厚生労働省が昨年12月24日に公表した「令和2年度の妊娠届出数の状況」では、2020年1~10月の累計妊娠届出数は72万7千件で前年同期間の76万6千件と比較すると5.1%減、18年と19年の同期間の3.5%減よりも減少傾向が進んでいることが分かりました。
特に昨年4月に出された緊急事態宣言後の5月には前年同月比で17.6%減となるなど、妊娠数を大きく押し下げています。
このままでは、長期にわたる経済の停滞のみならず、少子化にも拍車が掛かることが予想され、わが国の社会保障制度の将来に暗い影を落とします。
医療・年金・介護など社会保障制度は現役世代の負担により高齢者らを支えています。
今までは何とか持ちこたえてきましたが、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始める2022年から、医療費が急増し、現役世代の負担が限界を超えることが確実視されており、医療保険制度が早晩崩壊すると危惧されています。
政府も年齢ではなく所得に応じた負担に是正する「全世代型社会保障改革」を掲げますが、改革の緒に就いたばかりです。
1日も早い新型コロナの収束と現役世代の負担軽減が行われないと、生活への不安などから結婚や出産をためらい、さらに少子化が進む負のスパイラルに陥ることが憂慮されます。残された時間はもうないのです。
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医療保険制度を持続させるため
医療保険制度を持続させるため高齢者も所得相応の負担を
新しい年を迎え、謹んで新春のごあいさつを申し上げます。
本年も健保組合・健保連は、皆さんの健康維持・増進のための事業をはじめ、将来も安心して医療が受けられるよう医療保険制度改革の実施に向けた活動に精力的に取り組んでいきます。
昨年は新型コロナの感染拡大により、医療や経済など国民生活が激変した年でした。
東京オリンピック・パラリンピックも1年延期されましたが、いまだ収束する気配はありません。
引き続き〝ウィズコロナ〟の下で3密を避ける生活を強いられることになりそうです。
厚生労働省は昨年11月末、2018年度に医療機関に支払われた医療費(保険診療)の総額である国民医療費が約43.4兆円、国民1人当たりで34万円強――といずれも過去最高を更新したことを公表しました。
増大した理由は高齢化の進行と医療の高度化ですが、22年は団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始めることから、医療費が急増し健保組合など保険者の財政が急速に悪化することが懸念されています。
そのため、後期高齢者の医療費を負担している現役世代の保険料負担が過重にならないよう、後期高齢者の窓口負担に新たに2割負担を設け、一定以上の所得のある高齢者にも負担をしてもらうことが、政府の方針として決定しています。
昨年末、この所得の扱いが焦点となり一応の決着をみましたが、非課税世帯を除く幅広い世帯を対象にすべきというのが健保組合、健保連の主張です。
さて、今年の干支は「辛丑(かのとうし)」。
辛は「ゆっくり衰退」「痛みを伴う幕引き」という意味が、丑は植物の芽が固い殻を破る「命の息吹」という意味があるそうです。
このことから、辛丑は古きことに悩みながらも終わりを告げ、新しい芽生えを見いだす年になるともいわれています。
言葉の意味どおり、コロナ禍などによる閉塞的な現在の状況を打開し、痛みを伴う改革になるかもしれませんが、持続性のある医療保険制度の構築に向けて、新しいスタートを切りたいものです。
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コロナに翻弄(ほんろう)されたこの1年
コロナに翻弄(ほんろう)されたこの1年 待ってはくれない制度改革
年の瀬が迫ってきました。
振り返ってみればここ数十年で、これほど人びとが翻弄された1年はなかったのではないでしょうか。
昨年末に「新型コロナウイルス感染症」が確認されて以来、世界中にまん延し、感染者数は5400万人を超えました。
わが国も感染者数は12万人を超え、収まる気配はありません(11月17日現在)。
約百年前のインフルエンザ(スペイン風邪)以来の世界的感染は、私たちの生活を一変させました。
当時と異なるのは、5千万人とも1億人とも言われた死亡者数が、医学や衛生面での進歩によりはるかに少ないことです。
わが国の経済も大きな打撃を受けましたが、政府の個人や経営者に対する給付金や「Go To トラベル」などの経済復興支援で秋口以降、徐々に経済活動が回り始めました。
一方、これまでの生活が一変し、3密を避け、手洗い、うがい、消毒を心掛け、マスクをすることが新たな生活習慣となり、これに伴い、従来の仕事のあり方や価値観が大きく変わろうとしています。
すでにテレワークが浸透し始め、飲食店や小売店の業務にも〝ウィズコロナ〟の時代に合わせた感染防止の工夫がみられます。
今回のコロナ禍では、わが国の企業や行政手続きなどにおけるデジタル化の遅れもあらわになりました。
政府はデジタル化の統合的な推進を目指して「デジタル庁」の創設や各種規制緩和を推し進めています。
社会全体が大きく変わろうとしている中で、少子高齢化だけは変わることはありません。
少子化の進行は経済や社会を支える現役世代の減少に直結します。
また、2022年以降、後期高齢者数の増加により、医療費が急速に増大することが予想され、このままでは医療保険制度の崩壊につながります。
来年も厳しい状態が続くと予想されますが、政府には医療保険制度の安定した運営に向けて、待ったなしの姿勢で制度改革に取り組んでもらいたいものです。
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コロナ禍により進むデジタル化
コロナ禍により進むデジタル化 オンライン診療の恒久化も
今回の新型コロナウイルスの感染拡大で痛感したのは、わが国の企業や行政手続きなどにおけるデジタル化の遅れです。
私たちは普段の生活で、インターネットなどで金融機関口座の残高照会や振り込み、商品の購入や代金の支払いを行うなど、デジタル環境が生活の一部といえるほど身近な存在になっています。
ところが、コロナ禍で、政府が国民の生活を支援するため、1人当たり10万円の現金給付を決定しましたが、マイナンバーカードによる電子申請では、市区町村が振り込み先の金融機関口座の確認などに手間取り、郵送による申請の方が早く振り込まれる(それでも入金までに1カ月程度かかった)などの混乱が生じたのは記憶に新しいところです。
海外では、インターネットによる電子申請で数日以内に現金が振り込まれるなど、緊急時における対応の差がマスコミで盛んに報じられました。
電子立国で有名なエストニアなどでは国民に割り振った番号と金融機関口座が連動しており、それが素早く対応ができた理由です。
今回の状況を重んじた政府は9月23日、デジタル化の推進に向け、菅義偉首相と全閣僚をメンバーとする「デジタル改革関係閣僚会議」を設置し、「デジタル庁」を創設するための検討を開始しました。
コロナ禍で社会が変容する中、喫緊に取り組む事項として、①マイナンバーカードのさらなる活用②迅速な給付の実現③国と地方を通じたデジタル基盤の構築――などを目指します。
医療関係では、すでに準備が進められているマイナンバーカードを健康保険証として活用することや現在、時限措置となっているオンライン診療を恒久化し、拡充していくことなどが含まれています。
デジタル化の推進に当たっては、国民各層が分かりやすく使い勝手のよいインターフェース、個人情報等の漏えいに対する万全なセキュリティを備えたシステム構築がカギとなります。
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新型コロナ、ピークを過ぎても
新型コロナ、ピークを過ぎても社会保障や経済に深刻な影響
10月は本来、気候的に過ごしやすく、レジャーやスポーツなどを行うのに最適な季節です。
健保組合・健保連は、健康づくりに関する各種事業の実施を通じて生活習慣病予防を周知する期間として、この月を「健康強調月間」と定め、加入者の健康保持・増進を図ることとしています。
さらに、超高齢社会において、元気なお年寄りに社会参加してもらうため、健康寿命の延伸につなげることを目的としています。
それが新型コロナウイルスの感染拡大で一変してしまいました。
生活のあり方が大きく変わり、働き方ではテレワークの導入が進み、時差通勤、業務時間の短縮が常態になりつつあります。
日常生活でも3密(密閉、密集、密接)を避け、手洗いやうがい、消毒を心掛け、外出時にはマスクを着用することが常識となり、手軽に旅行に出かけたり、友人らと会食をすることなどに慎重になりました。
政府の分科会は、7月下旬が感染のピーク、と分析しています。
確かに8月中旬以降、感染者数が減り始め、9月以降は1日当たりの感染者数が落ち着き始めています。
しかし、諸外国では感染者は増加し続けており、この状況は当面、収まりそうにないのをみると、予断を許しません。
気になるのは、新型コロナ対策で投入された膨大な国庫(税金)です。
政府は4月20日、総額117.1兆円規模の「新型コロナウイルス緊急経済対策」を決定しました。
その財源の大半は新規国債の発行です。
国債は国の借金ですから、何らかの方法で返済していかなくてはなりません。
これに密接にかかわる日本経済は失速し、回復の見込みが立ちません。
一方、超高齢化に伴い社会保障制度は深刻な状況に陥っています。
このような難問山積の中、安倍晋三首相は持病の悪化を理由に8月28日、辞任する意向を表明しました。
9月16日の臨時国会で、選出された菅義偉新首相が、これらの課題にどう対応していくのか、その手腕が問われるところです。
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新型コロナウイルス感染拡大の陰で
新型コロナウイルス感染拡大の陰で受診を控えて、重症化の懸念も
新型コロナウイルスの感染者数は7月7日、全国で2万人を突破して以来、上昇の一途をたどっています。
1日に1千人を超える状況が続き、8月19日には累計5万8千人強と約3倍に増えました。
そのため、医療機関などへの入院者数が退院者数を大幅に超え、医師や看護師など医療従事者の疲弊が増すとともに経営にも暗い影を落としています。
また、医療施設の不足している島々などではクラスターが発生し、その対応に追われ、島民らの不安が増大しています。
こうした状況を受けて、独自の緊急事態宣言を行う自治体も出てきました。
東京都の小池百合子知事も、お盆休みの旅行や帰省などを控えるように都民に呼びかけました。
一方、政府は感染者の増加の実態を踏まえつつも、落ち込んだ経済の活性化に向け、「GO TO トラベル」(観光支援事業)を7月22日から実施しており、現状下で緊急事態宣言を再発令することには慎重な姿勢です。
感染者数の急増の陰で、懸念されることが2つあります。
1つはウイルス感染を恐れるあまり医療機関への受診を控えているケースです。
特に持病のある人が受診を控えることで、かえって重症化を招く恐れもあります。
医療機関も3密を避ける体制ができていますので、事前に体温を測り予約してから受診するなど、必要以上に恐れず、我慢しないことが重症化を避ける上でも大切です。
もう1つは、人間ドックなどの健診が受けられないことで、病気の早期発見が遅れ重症化を招く可能性があることです。
この春先から多くの医療機関や健診センターでは、ウイルス感染の防止を目的に健診の受付を中止している状況が続いています。
こんなときこそ、体調管理をきちんと行い、適度な運動や栄養バランスに富んだ食生活を心掛けましょう。
幸い、健診の予約受付を再開する実施機関が出てきているのは朗報です。
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「新しい生活様式」で感染予防
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の解除(5月25日)、東京アラートの解除(6月11日)以降、感染者数は上昇に転じ、7月7日に全国で2万人を突破。
特に東京都では2日以降、3桁台で推移しています。感染経路として、近い距離で接客を行う夜間営業の飲食店関係者や客の間で感染者が増えている他、20〜30歳代の若い世代が多いことが分かっています。
東京都は15日、感染状況の警戒レベルを最高の「感染が拡大している」に引き上げ、小池百合子都知事も不要不急の他県への移動を控えるとともに、感染防止策が十分行われている店舗の利用などを呼び掛けました。
一方、政府は他県への移動を制限する状況にないとしています。
感染の第2波を懸念する声もありますが、今重要なのは新型コロナが終息したわけではなく、少しでも気を緩めると感染が再拡大するということと、従来のような生活に戻れるわけではないという事実を自覚することです。
では、今後どのように生活していけばよいのでしょうか。国は「新しい生活様式」の実践を提唱しています。
これは4つの項目からなり、1つ目は一人一人の基本的感染対策で、①身体的距離の確保②マスクの着用③手洗い―の3つの基本を守るとともに、不要不急の外出を控えること。
2つ目は日常生活を営む上での基本的感染対策で、手洗い・手指消毒の励行、3密の回避などを維持すること。
3つ目は日常生活の各場面別の感染対策で、買い物、娯楽・スポーツ等、公共交通機関の利用、食事、イベント等への参加などにおける感染対策。
最後の4つ目は働き方の新しいスタイルの提唱で、テレワークやローテーション勤務、時差通勤などの導入です(詳細は厚労省のホームページ:https://www.mhlw.go.jpで「新しい生活様式」で検索)。
従来の生活習慣と大きく変化するため、慣れるまで時間やストレスを感じるかもしれませんが、上手に取り入れたいものです。
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