被扶養者の検認調査の重要性

被扶養者の検認調査の重要性 医療費や納付金に大きな影響

 健保組合の多くは新年度を迎えると、勤め先を経由するなどして、被保険者に「被扶養者資格確認調査(検認)」と呼ばれる調査を行います。
これは、被扶養者(扶養家族)が継続して健康保険の資格を有しているかを確認するためのものです。

 3月、4月は卒業や就職の季節です。
お子さんが就職すると、就職先の企業の健康保険に加入するのですが、意外と多いのが、就職前に扶養家族として加入していた健康保険からの脱退手続き(被扶養者異動届の提出)を忘れているケースです。
そのほか、パートやアルバイト等により一定以上(年間130万円以上、60歳以上などでは180万円以上)の収入がある場合なども、被扶養者から外れます。

 なぜ、検認を行うのでしょうか。
製造業の健保組合の例を紹介します。
この組合は昨年度、本社以外の関連企業の16歳以上の被扶養者と、本社勤務の被保険者と別居している16歳以上の被扶養者の計2751人を対象に検認を行いました。
その結果、被扶養者資格を失う人が121人。
その内訳は、既に被扶養者が就職していたケース60人、パート等の収入が一定額をオーバーしていたケース24人、その他が37人でした。

 さらに、この人たちがこのまま健保組合に残った場合の医療費を試算しました。
結果は年間1182万円の増加です。
深刻なのは高齢者医療への納付金です。
試算では同3098万円で、合計4280万円という巨額となり、健保組合への財政に大きな影響を与えることが判明しました。

 高齢者医療への納付金は、複雑な計算式で決められますが、その算定には被扶養者を含めた総加入者数が基礎になります。
そのため、被扶養者をきちんと把握し、正しく申請を行わないと、余分な拠出金(納付金)を納めることになり、ひいては皆さんが納める保険料の引き上げにつながります。

 被扶養者の検認の調査を行うことの重要性は、まさにここにあるのです。


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2021年05月07日